土佐錦の創り方

土佐錦の創り方

(私が行っている1年の作業)

【 1月 】
冬眠中も、時々観察し水直しをする

水が痛んでいないか?青水が濃過ぎていないか? 水面に泡が見えたり、逆に青水が減少し水が澄んできているのも水質悪化のサイン。赤い金魚の姿が適度に観察出来る程度まで、底に溜まった糞やゴミを取り除きながら底の水をサイホンの原理で抜き取り減ったぶんの水を足す。
水温が15℃程度まで上がる日には金魚の活気をみて少しだけ餌も与える事もある

【 2月 】
しっかり寒にあて、冬を感じさせる

産卵させたいペアは屋外で飼育し、水温6℃程度なら1ヶ月ほど寒さを感じさせたい、でないと春に産卵しない恐れがある。
(水温が下がると生命の危機を察し子孫を残さないといけない行動に出るのでは?と思われます)

・親にする金魚
親にする金魚は、オスは尾の広がりや返し、メスは丸手の体つきがふくよかさを重視し、系統を分けて何かしら特徴のある(魚体が長い、色が良い、尾が大きい、金座が大きい、目先が良いなど)金魚を選び、何より自分が創りたい金魚を思い浮かべながらペアにしています。
親に選んだ金魚の特徴と、その子が将来こうなったと憶えておく事が大切で、雄雌1対1で親の特徴を記録するようにしています。

【 3月 】
春起こしは、一年で一番慎重に行う作業

春起こしは慎重に行う。丸手の土佐錦は転覆や体調を崩しやすく、元気で健康に起こさないと採卵にも影響します。梅が咲くニュースを聞くと準備を始め、桜の開花に向けて春起こしを完了させる。

・中3日5回の換水で2週間かけて春起こし
・1回目:水換え、1/3の交換
(主にゴミや糞をとる程度)
・2回目:水換え、1/3の交換
・3回目:水換え、1/2交換
・4回目:全換水
・5回目:全換水(苔を落とす)

・鳥獣対策もしっかり
この時期、野生の動物たちは子育てに一生懸命で予想もしない事をするので、しっかりと対策し油断しない事が大事です。

【 4月 】
天気予報と睨めっこ、産卵タイミングを計る

まだ、極端に最低水温が下がる日もあるので4月中ごろ以降が理想的だと思います。6月頃まで産む場合もありますが 4月5月が良いです。あまりに早くオスに追星が出てたり、メスを追う行動が見られたら、一旦オスメスを分ける事も検討する。

・準備
大きさや状態をみて明け2歳から産卵しますが、3歳からが安心して採卵出来ます。
餌の与え過ぎや頻回な水換えは良くありません。産卵させたい日に向けて観察し調整する。

・産卵の兆候
オスに追い星が出てる。オスがメスを追っている
天気(低気圧)が曇りや雨・大潮といった条件が揃う
産卵のある日の朝は餌を食べなかったりしますし、
予定日は餌を与えません。
(餌が残っていて体調が悪いのでは?と水換えすると刺激になり産卵する事もある)

・人工授精
洗面器の底に網みたいなネットを敷いておくと受精率が上がるように思います。
理由は、ネットの上で適度に卵間と洗面器に隙間が出来る事で通りが良くなり受精率の向上、酸欠や水カビの伝染を予防するなどの効果が期待できます。 また、卵は非常に粘着力が強く抜け殻をそのままにしておくと水質が悪化します。 敷いたネットを抜け殻ごと引き抜くと簡単です。

洗面器に、メスは腹部を軽く揉み、オスは横腹を軽く揉んで授精させます。押し過ぎて脱腸させないように注意。洗面器を回しながら出来るだけメスの卵を散らし、次にオスが精子を出したら洗面器内を激しく掻き混ぜます。手早く卵を散らし満遍なく精子を行き渡らせる事が大切です。
受精後は紫外線を避け室内に移し暗い場所で見守ります。


・孵化
翌日、受精卵は透明なままですが、無精卵は白く変色します。無精卵はスポイトで根気よく取り除くようにします。
2,3日すると卵に黒い目が見えるようになり、室温15~20℃では4~5日で孵化します。早くても遅くとも良くありません、まだ夜間急激に冷え込む日もあるため必要ならヒーターも使用して5日目で孵化するように調整します。

孵化すると「さいのう」から栄養をとり動かずじっとしていますが2~3日すると餌を求めて泳ぎだします。これを「立つ」と言って忙しい日々が始まります。

・初給餌
生まれたばかりの稚魚は小さくて市販の餌を食べる事が出来ませんので、固く茹でたタマゴの黄身をガーゼ生地で擦り漉して与えます。また、同時にブラインシュリンプの準備を始め、日に少量を何度かに分けて与えるのが良いのですが仕事をしているため、朝夕と就寝前に3回/日の給餌を行っています。

【5月】
丸鉢で飼育することで、独特な尾が作られる

土佐錦の当歳魚は秋までは、モルタルで作られた丸鉢で飼育します。 針子から稚魚になり選別が出来るようになったら、1鉢に1ペアの子から50匹程度を丸鉢に移します。

体長1センチ5ミリ位の稚魚で,60~70度以上
2センチのものになれば、90~100度以上

・先人達が培ってきた飼育方法
・尾がすり鉢状の丸鉢の縁を擦る事で独特の反転した尾の土台が作られる。
・丸い形をしていることで、泳ぎが止まらず尾の成長を助ける。
・水面と底での水温差があり上下運動が期待出来る。
・モルタルで作られた丸鉢は上品な顔を作るのに必要な良い苔が付きやすい。
 などが理由だと思う。 ”土佐錦魚の四季” という昔の本の中では
「一センチ以上の体長になれば暫くは必ずスリ鉢形のセメント丸鉢を考えていなければならない。それは、余り長い直線コースを急スピードで泳がせていると、魚体に丸みがつかないし尾鰭の張りも悪くなるからで、静かに旋回させておくに越したことはない」と書かれています。

【6月】
選別を繰り返して、適正な尾数にしていく

丸鉢に入る尾数が多いと込み合って成長に影響を与え、少な過ぎるとフードを取り合う相手が減るので多めに残すと金魚がフードを奪い合って良く食べて育つという事で、金魚の大きさにあわせて丁度良い尾数に徐々に減らし、目で見て選別が難しくなったら、”スーと真っ直ぐ、素直に泳ぐ” 子を残し、理想は4月生まれの子が順調に育てば秋頃には一鉢3~5匹になります。


<選別対象例>

     ふな尾
     エビ尾
     尾芯切れ
     片腹
     成長不良
     返しの異形
     尾が張り過ぎ
     広がりが弱い
     尾の角度
     エラめくれ
     尾芯重なり

【7月】
初夏、丸鉢で苔を育てる

壁面の苔を金魚が口をすぼめて突っつき契り取る事で、口先が尖った顔になるのを期待しています。

緑・茶・黒と苔にも種類があって、茶色っぽい珪藻も良いのですが、私は緑藻が見た目も気持ちが良いので、立ち上げ時には日光が良く当たる場所で植物の液肥を入れて緑藻が付くようにしています。

あまりに苔が育ち過ぎると、硬くなり食が悪くなったり、夜は酸素を摂るので明け方に酸欠になってしまう、逆に日中日光が当たると苔が酸素の気泡を出して酸素過剰となり、ヒレの下に気泡が溜まるガス病(気泡病)を生じてしまいます。
なので、水替えの度に手で探ったりして苔の生え具合を見ながら亀の子たわしで擦り調整します。

しかし、苔ばかり食べていると腹が出ず大きく育たないので、体形を見ながらフードと苔の食べる量を糞の色で見当をつけてバランスを見るようにしています。

モルタルの丸鉢に、しっかりと付いた緑藻
緑藻を食べた緑の糞と白っぽい土佐姫を食べた糞

【8月】
経験と勘で、日光・水・苔・餌を調整

・出来るだけ影を作らず、丸鉢を良く泳がせる
・水交換しエアレーションを出来るだけ控える
・フードの量を調整し苔もしっかり食べさせる

・日光を当てる(影を作らない)
 ⇒丸鉢の周りを周遊し止まらず良く泳ぐ
   ⇒尾の成長を助けシワを作らない
 ⇒丸鉢の縁を泳ぎ尾ヒレが擦られる
   ⇒独特な尾ヒレが形成される
 ⇒水温が上昇してしまう
   ⇒水中の溶存酸素が減少する
    ⇒金魚が酸素を取り込もうと
     エラを広げ激しく動かす
      ⇒エラめくれが起こる
 ⇒緑藻が多く発生することで酸素過剰となってしまう
   ⇒尾ヒレに気泡が入る
 ⇒丸鉢は泳ぎが一方向になってしまう
   (地球の自転も影響)
   ⇒クセが付ついてしまう

・日影を作ると
 ⇒水温の上昇を抑える
   ⇒水中の溶存酸素が増加
     ⇒エラめくれを予防
 ⇒緑藻の発生を抑えられる
     ⇒苔緑藻の光合成の抑制
       ⇒尾ヒレの気泡を予防
 ⇒日影に隠れて泳がなくなってしまう
   ⇒尾の成長に影響を与える
     ⇒尾ヒレにシワが出来る

・苔を育てると
 ⇒苔を金魚が口をすぼめて突っつく
   ⇒目先が良くなり上品な顔立ちになる
 ⇒苔に日光が当たると
   ⇒苔の光合成で酸素が過剰供給
     ⇒尾ヒレに気泡が入る
 ⇒夜間は酸素を吸収し朝方の酸欠リスク
 ⇒苔ばかり食べていると大きく育たない
   ⇒腹が出ない ⇒ 体形が崩れる

・餌を多く与えると
 ⇒金魚が良く育つ
   ⇒腹が出る
 ⇒フードばかり食べてしまう
   ⇒苔を食べず
     ⇒目先が出ない
 ⇒水が富栄養となってしまう
   ⇒苔が育ち緑藻が発生する
     ⇒金魚が苔を良く食べる
       ⇒目先が良くなる
   ⇒光合成で酸素が過剰供給
     ⇒尾ヒレに気泡が出来る

・エアレーションは必要に応じて
天気予報が晴れで最高気温が34℃以上になる日は、板2枚でも水温は40℃超となる恐れがあり日除けで間に合わない場合はエアレーションも検討します。
水温が上昇すると水中の溶存酸素量が減少しているにもかかわらず、水温が上がる事で金魚の代謝は活発になり、普段より多くの酸素が必要となります。 しかし水中の酸素は枯渇しているため、重度な酸欠状態に陥り、金魚は足りない酸素を少しでも多く取り込もうと、エラを大きく、そして激しく動かし続けます。エラ蓋の縁は柔らかい膜や軟骨でできているため、この異常なペースでの過呼吸が続くことで物理的な負荷に耐えきれず、外側に反り返るようにめくれてしまいます。

エアレーションを行うと酸素が供給されエラめくれを予防しますが、水流が発生する事やストーン部に金魚が集まり尾ヒレの成長に影響を与えるため、使用する場合には丸鉢の中心の水面で弱めに行い出来るだけエアレーションは控えて毎日の水交換を頑張ります。
 
 

【9月】
尾・顔がキマったら、次は腹を出す

夏の高水温で食欲の低下していた金魚も彼岸花が咲き始める頃からは食欲が増してきます。
秋からはフードを数時間で食べ切れる量を数回に分けて与え、たくさん食べて腹を出し大きくなってほしいのですが、仕事の都合上朝夕の2回になってしまうため、品評会で見る当歳魚ほど大きくは育ちません。ですが、3年5年と年数を重ねると立派な土佐錦になってきますので急がず仕上げていきたいと思います。

【10月】
夜間の冷え込みに注意する

近所の川に鴨が渡って来たのをみかけると、丸鉢で基礎を作って来た金魚も、いよいよプラ船に集めて飼育するようになります。毎日の水換えも、水の状態を見ながら適時交換し透明でも酸素量には気を付けましょう。
朝夜冷え込む日もあり、1日の温度差が大きく金魚が体調を崩しやすく病気のリクスが高まる時でもあります。予想気温を見て仕事から帰宅後に与えるフードを控える事もあります。

【11月】

【12月】